空き家、利用困難な不動産の問題についての考察
常日頃から多くのご相続の相談を受け、対応させていただいていますが、近時、本当に悩ましいなと感じているのが、いわゆる「負の不動産」の問題です。
道幅の広い公道に接した、きれいな形の宅地等(農地であっても市街化区域の農地など)であれば、利用価値が高く、「ここを相続して家を建てようか、アパートを建てて経営でもしようか、それとも他に売ろうか」など利用の途が様々考えられます。
しかし、公道に接していない、車両のすれ違いができないような道幅の狭さ、不整形地である、崖の上にある、建物が非常に古い、通り抜けができない、など様々な困難がある場合、不動産は、「負動産」となり「こんな利用価値のない不動産は相続したくない」と相続人全員が考え、負動産の押し付け合いともいえる状況に陥ってしまいます。
空き家については、いわゆる「空き家バンク」の利用が考えられます。自治体運営の空き家情報システムに情報を掲載し、空き家を売りたい・貸したい側と、空き家を買いたい・借りたい側がマッチングすれば、空き家の活用法が広がります。また、自治体によっては空き家改修やリフォームのための補助金などの制度が利用できる場合もあり、売却可能性が更に高くなるでしょう。
しかし、このような空き家バンクに登録してもなかなかマッチングしない、という例は数多く存在します。空き家バンクに登録したからといって、「そもそも、その土地の性状からして利用価値が低い」という根本的な問題が解決さるわけではないからです。
このような「利用しにくい」土地は日本の地方土地に無数に存在しています。地域としては利便性の高い地域であるのに、その区画に焦点を当てると、道幅が狭い、通り抜けできない、不整形地であるなどの利用しにくさから、居住を希望する人が減り、空き家や空き地が増加してしまう。いわゆる都市のドーナツ化、スポンジ化が進行してしまいます。
このような都市の問題を解決する政策の一つとして、「日本版ランドバンク事業」というものが推進されています。
これは、空き家や空き地の多い地域を、隣接地や前面道路とまとまって一つの区画と捉え、小規模な区画再編を行おうという事業です。
例えば、その区画の中の道幅の狭い道路を広げるため、所有者の方に一部寄付していただき道幅を広げる、空き家になっていた家を取り壊して分筆しなおし、改めて分譲宅地とするなど、小規模な区画内を利用しやすく再編することで、その区画全体を個々の所有者にとって利用価値の高い不動産に生まれ変わらせる、といった事業です。
広島県は、「広島型ランドバンク事業スキーム」に基づき、令和3年度から三原市本町地区をはじめとしたモデル地区を複数選定し、モデル事業を実施しているようです。そして、令和7年度を目途に実施されたモデル事業の検証結果をもとにマニュアルを作成し、これを全県に展開していく予定とのことです。
もちろん、この事業が福山市内に展開されるのはまだ先になるでしょうが、このような事業が活発に展開されることで、利便性はそう悪く無いのに、利用価値の低かった不動産が生まれ変わるのではないかという期待が高まります。
上記のような都市事業は、もちろん私の弁護士としての業務ではなく全く専門外であり、このブログも私の理解に不正確な部分があるのではないか、ちょっとドキドキしながら記事を書いています。
しかし、「負動産」を利用価値のある「不動産」に戻すことができれば、地方都市の繁栄、防災等の観点から、社会全体にとって望ましいことには違いなく、一個人としてこの問題に少しでも関心を持ち続けたいと考えています。
作成者:弁護士 竹村